緊張を和らげる優しい光

東京都、目黒通り沿いにオープンした眼科のプロジェクトです。
病院やクリニックといった医療空間に足を運ぶ際、わたしたちはどうしても緊張したり、心落ち着かないことが多いことと思います。それは、先生側にも感じられていたことでもありました。緊張されていると、問診の際に患者さんがうまく症状を言うことができなかったり、あるいは、患者さんが先生の言葉を理解するのに時間がかかってしまう、という先生のお話をお聞きして、建築は空間の緊張を和らげるような、優しい印象の空間を創ることがテーマとなりました。

照明計画は、待合、診察室とも間接照明を主にした光環境を整えています。待合では色温度をぐっと下げること、および、過度に明るくならないように明るさを抑えることで、カフェやリビングにいるような心落ち着く環境にしています。診察室内においても間接照明を主とし、グレア(眩しさ)を生まないための配慮を徹底しています。
目に負担のない優しい光で空間全体を整えることが、目に悩みをもつ患者さんに安心と、そして、空間に対しても多くの気を配られる先生への信頼が生まれることを願いました。

待合いにおける色温度は住宅と同じ電球色まで低くしています。低い色温度の光は、空間をあたたかく優しい印象にしてくれます。
向かい合って座る患者どうしの視線をそれとなく逸らすために、テーブル上にはスタンドライトを配置しています。プリーツのシェードが親しみやすい雰囲気に。背景には間接照明がまわり、柔らかく心地よい雰囲気をつくります。
受付から見える診察室。診察室も間接照明で明るさを確保しています。目に優しく、緊張感を緩和するための配慮です。
異なる地域から移転して来られ、新しく目黒に開設するにあたり、地域の皆様に温かく受け入れられる眼科でありたいと先生はおっしゃっていました。夜間診療を終えた後の時間も、待合の照明を残してくれています。人通りの多い通りに面したクリニックは、街に安心の明かりを届けるだけでなく、先生の患者さんを思う優しい雰囲気を伝えることにも繋がっていると思います。

2020/東京都
建築設計:小大建築設計事務所
照明デザイン:DAISUKI LIGHT
写真:堀越圭晋(エスエス)