光が満ちる町屋へ

京都、町屋をリノベーションしたプロジェクト。
町屋形式の光の問題点は、昼間の暗さにあります。採光が取れる窓は、通りに面した入口と住居一番奥の坪庭に限られることから、細く長い住宅形式において光が生活の中心に届かないことが採光上の課題です。“ほの暗さの中で坪庭に差し込む光を愉しむ”とは、ここで暮らすことがリアルでない、京都を訪れる人に向けられた言葉なのではないかと感じられるほど、施主には明るさへの希求がありました。太陽の光溢れる明るい家に住みたいというのは誰しもの願いだと思います。照明デザインは町屋特有のほの暗さを改善し、昼間の快適な光環境をデザインすることがテーマとなりました。

通りに面した窓からの光が内部に入り込むように、入り口すぐの2F床を落として、光を1Fまで通す吹抜け空間としています。加えて、その上部には天窓を配置することで、直射光も入るようになっています。坪庭まで含めた部屋全体を明度の高い白に空間を統一することで、部屋全体に光が拡散しながら回りこみ、広く明るく感じるようにしています。真っ白の空間の中に、歴史が積み重ねられた柱梁が象徴的に浮かび上がり、インテリアにも町屋としての気配を留めています。陽射しの恩恵を最大限室内に取り込むことで採光の課題を改善し、現代的に生まれ変わった町屋空間の中に昔の記憶も感じられる、懐かしさと未来を併せ持つ住まいとなりました。

白い吹抜け空間が光を溜め込みながら、優しい光が降りてきます。トップライトからは直射光も差し込んできます。床に落ちた光をもう一度反射させて光を回すために、床面も明度の高いライトグレーにしています。
真っ白な吹抜け空間の中に浮かぶ柱と梁が印象的に。組跡が建物の歴史を物語っています。
坪庭や洗面も白で統一することで、一体的な広がりが感じられます。
坪庭を愉しむ光。
寝室も白い空間に。内装が白い空間は、照明器具が少ないわずかな光の配置でも十分に明るさを確保することができます。
漏れ明かりは窓枠の中に照明を仕込み、その効果も十分に検討されました。あたたかい光が漏れてくると、町屋の風情が一層惹きたちます。

2020/京都府
建築設計:小大建築設計事務所
照明デザイン:DAISUKI LIGHT
写真:堀越圭晋(エスエス)