寄り添うあかり

一畳十間は“日本の心地良い美がある暮らし”をテーマに掲げ、日本の暮らしの中で培われてきた知恵や長く親しまれてきた素材を大切に、住みながら心身の栄養を蓄えられることができるような暮らしの提案です。

“日本の心地良い美”―それは住まい手の心情への気配りが、隅々まで行き届いていることだと考えました。丁寧な光の気配りがあってこそ、安心が生まれ、身も心も解放し、明日への英気を養う住まいになるはずと。

照明は「寄り添うあかり」をテーマとしました。
家に帰るとふわーっと優しく灯る“おかえりなさい”のあかり。家族が集まるダイニングに”彩りを添えるあかり“。子供の就寝後には夫婦いつまでも語りたくなる“心を解きほぐす炎のあかり”など。住まい手に寄り添いながら、あかりを身近に感じてもらうこと。ちょっとした光の配慮が、心を癒したり、愛着のある光になることを意図しています。

もうひとつは、あかりとの自然な寄り添い方。居心地の良い光のもと、自然体な夜を過ごすことで、ほっと安心し、心が休まります。そうして穏やかに心が解放されることで、わたしたちの“感受性”が高まると思うのです。手仕事の木の温もりを感じたり、活けた花に風情を感じたり。就寝前の心落ち着くひとときが、一日の疲れをゆっくりと取り除き、明日への栄養を蓄えられるのだと思います。

わたしたちは“美しい空間”ではなく、そこで暮らす人の“感受性を高める空間”を目指しました。日々の暮らしの中で美しいものを発見したり、味わいながら暮らしていく、あるいは、そこで育まれるものを美しいと感じとる、その心のあり方こそが“日本らしい心地良い美”なのではないかと思います。

帰宅するとふわーっと優しく灯る“おかえりなさい”のあかり。玄関土間からダイニング・リビングまでゆっくりとあかりが灯り、家人を優しく迎えてくれます。
家族に“彩りを添えるあかり”。間接照明がダイニングを優しく包みます。ペンダントライトには光源に赤の波長をプラスすることで、家族の表情を柔らかく見せ、料理を美味しそうに見せてくれます。
リビングには“心を解きほぐす炎のあかり”。落ち着いたあかりのもとで会話を楽しむ、本を読む、お酒を嗜む。就寝前に明るい光を浴びないことが心地よい睡眠にもつながります。
洗面や寝室はホテルライクに。気分を高める雰囲気をつくることも大切にしています。
夜中のトイレはほんのり灯ります。夜中に起きてしまっても眩しくない、安心のあかりです。

2021/東京都
建築設計:小大建築設計事務所
照明デザイン:DAISUKI LIGHT
写真:後藤晃人