あたらしいレトロ

1968年に建てられた青学会館。50年以上経つ本館建物がカフェとレストランへとリノベーションされました。この青学会館1階は青山学院の校友に親しまれたチャペルや披露宴会場を備えた元ウエディングサロン。新型コロナウイルスの影響から、惜しまれつつも一旦閉館となったアイビー・ホールですが、街に開かれた飲食・店舗として再出発しています。

卒業生と学生の親睦を深める場所をつくりたいという想いから、青学会館の伝統に相応しいレトロな雰囲気と、現在の学生にも受け入れられる新しさが求められました。
「レトロ」とは、古き良きものを懐かしむこと。残念ながらチャペルはなくなってしまいましたが、かつてこの場所で結婚式を挙げた夫婦が訪れた際に、当時を思い出すようなトリガーを埋め込むこと、また、チャペルの存在を知らなくなる次世代の学生たちにも語れるストーリーを紡ぎたいと考えました。

ここでは、既存のチャペルでこれまでずっと使用されていた、ステンドグラスやシャンデリアをはじめとした照明器具、チャペルのベンチやレリーフまで、デザインの痕跡が散りばめられています。あたらしくもどこか懐かしい、昔からここにあったような空間の雰囲気を大切にすることで、ふとしたきっかけでウェディングに思いを馳せるような、あるいは、スタッフとの会話の中で当時を知ることができるような、世代を繋ぐ空間としてデザインされました。街に開かれたことで、本校の校友だけでなく地域の方々にも親しまれ、再び活況を取り戻すような施設になることを願っています。

Ivy Hallチャペル「ホーリー」

茶珈堂。シャンデリアやブラケットなどの照明器具はかつてチャペルで使用されていたもの。器具を長く大切に使うだけでなく、積み重ねられた時間を大切にすることで、再び新しい世代への物語を生み出してくれると信じています。
チャペルの祭壇に据えられていたステンドグラス。かつては夫婦の出発を見守っていました。この場所で新たな出発を見守ります。
TOKYO FANTASTIC ボタニカル。ウェディングに生花は欠かせないものですね。店内を華やかに彩っています。
洋食の果実。シャンデリアの華やかな光は私たちを高揚させ、楽しませてくれます。もちろん、お料理やお皿、カトラリーにも小さな光源がたくさん映り込み、洋食ととても相性が良いのです。
新しくもどこか懐かしい、ずっと昔からここにあったようなお店を目指しています。

2021/東京都
建築設計:清水建設
インテリアデザイン:フィールドフォー・デザインオフィス
照明デザイン:DAISUKI LIGHT
写真:後藤晃人